そんな盲ろう者や通訳・介助員が集まり、福祉のあり方について話し合い、交流を深めるためのイベント「全国盲ろう者大会」(主催:社会福祉法人 全国盲ろう者協会)が、2025年10月24日(金)から26(日)の3日間、宇都宮市のライトキューブ宇都宮で開催されました。今回は、本大会が盲ろう者や通訳・介助員の方々に与える影響や意義を、会場レポートや主催者の声を交えながらお届けします。
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障がいの違いを超えるコミュニケーション
大会最終日となる10月26日(日)、会場には全国各地から集まった盲ろう者や通訳・介助員の方々が再会を楽しんでいました。ひと口に盲ろう者といっても、障がいのレベルは人それぞれ。耳は少し聞こえる方、目は少し見える方、まったく目も見えず耳も聞こえない方などがいて、コミュニケーションの手段もさまざまです。しかし、手段は異なっていても、皆さん明るく自然にコミュニケーションを取っていたことが印象的でした。

全身で交流を楽しんでいる様子が多く見られた
盲ろう者や関係者の力を一つに、大会の継続を
当日に行われた討論会では、大会の運営に関わる盲ろう者の藤鹿さんが司会を務め、今後の大会運営や参加者からの大会への要望についての意見交換が行われました。印象的だったのは、藤鹿さんの「さまざまな要望をあげる気持ちはとても理解できる。しかし、どうすれば実現できるかのアイデアもほしい。自分ごと化して大会を支えていただければ」という発言。認知度も低く、支援も十分でないからこそ、全員が一丸となって活動を続けていく必要がある。フジシカさんの言葉からは、非常に強い意志が感じられました。

参加者側と運営側、両方の立場から言葉を選ぶ藤鹿さん
その後、自由に交流する時間が始まると、討論会の白熱した雰囲気とはうって変わって、皆さん穏やかに交流を楽しんでいました。通訳・介助員の方が盲ろう者の指をタイピングして話の内容を伝える「指点字」や、相手の手に触れて手話を読み取る「触手話」など、盲ろう者ならではのコミュニケーションが見られました。実際にそういった姿を見ると、やはり直接触れ合える交流の場は絶やしてはいけないと、先ほどの藤鹿さんの言葉の重みが改めて感じられました。

手から相手のことばを読み取る「触手話」
大会は盲ろう者にとってのパワーの源
大会中には、盲ろう者としてハンデを背負いながら日本初の大学進学を果たし、現在は東京大学の教授を務める福島智さんにお話を伺うことができました。第1回からこの大会を見守り続けてきた福島さんに、大会への思いを語っていただきました。
福島さん:「1991年に始まった大会も少しずつ大きくなって、仲間が増えていきました。この大会を通じて各地に新しい盲ろう者の会ができたり、さまざまな福祉制度が広がっていったりと、パワーの源になっていると思います。また、盲ろう者同士が触れ合って語り合うこと、これは理屈抜きに大切なことなんですね。今回の大会はコロナ禍や台風などの影響もあり、6年ぶりの開催となりました。その間もオンラインを通じてコミュニケーションはとっていたのですが、オンラインで握手はできませんからね。そういった意味でも大会はパワーの源ですし、これからも続いていってほしいですね」
交流の大切さを繰り返し強調されていた福島さん。大会の現在だけでなく、未来についても伺うことができました。
福島さん:「いろんな可能性を秘めた大会だと思います。各地での福祉制度の格差解消、就労支援や盲ろうの子どもたちへの教育だけでなく、友人や結婚相手を見つけたりもできると思うんです。社会参加と個人で生きていく上でのQOL向上、両方においてこの大会は良い機会になるので、そこを育てていければと」

大会の広がりを感慨深そうに語る福島さん
支える人や一般の人にとっても意味がある大会に
全国盲ろう者協会の事務局次長である小林真悟さんからは、盲ろう者を支える通訳・介助員の観点から大会についてお話しいただきました。
小林さん:「大会は年に一度、全国各地の盲ろう者のみなさんが集い、交流を深める貴重な場であると共に、社会参加の機会となっています。また、通訳・介助員の皆さまにとっても、地元では目にする機会が少ない通訳方法や、通訳技術について知る機会となっており、通訳・介助技術の研さんの場にもなっています」
今回の大会でも盲ろう者の方々のそばには、常に通訳・介助員の姿がありました。しかし、認知が広がらなければ、サポートする人々も増えていきません。
小林さん:「2024年、日本には約9,300人の盲ろう者がいるという調査が出たのですが、その人数に対して通訳・介助員が足りていません。今いる通訳・介助員の方々の高齢化も進んでいます。競輪とオートレースの補助事業に会場や設営費などの面でサポートをいただきつつ、この大会を継続することで、盲ろう者のことを知らなかった人にも認知していただき、『自分にもできることはないかな』と思ってもらえたらうれしいです。もちろん、この記事を読んだ方々も、全国各地に盲ろう者友の会という団体がありますので、何かあればご連絡いただければと思います」

周囲の支えがあってこその大会だと話す小林さん
まだまだ認知や理解が足りていない状況ながらも、協会や通訳・介助員、そして盲ろう者の方々が一丸となって前を向いて進もうとする姿に、静かで大きな熱量が感じられた大会でした。

閉会式でこれからの大会への思いを語る小林さん
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