「誰かの支えがあれば、オートバイも運転できる」をテーマに、障がいを抱える人たちの夢を叶える活動を続ける一般社団法人SSP(サイドスタンドプロジェクト)。その夢の一歩につながる体験走行会が、2024年3月12日(火)に神奈川県平塚市にある平塚競輪場で開催されました。
会場に集まったのは4名のパラモトライダー。緊張と抑えきれないワクワク感と、さまざまな表情で待ちに待った瞬間を迎えていました。
※パラモトライダーとは、病気や事故などで障がいを負ったライダーのこと。
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ひとりじゃないから走り出せる
あいにくの雨だったこの日は、平塚競輪場内の屋根のあるスペースで実施されました。体験走行会に参加したのは、脊髄損傷、視覚障がい、左上肢麻痺のある人たち。それぞれの障がいに合わせてカスタムされた、補助タイヤ付きのバイクに乗って一人ずつ練習を行っていきます。
最初のステップは、バイクに乗った状態でバランスが取れること。障がいによって体幹への力の入り具合が異なるため、バランスを取るのがとても難しいと言います。まずはエンジンをかけずに、ボランティアスタッフたちに押してもらいながらバランス感覚を掴んでいきます。
目標があるからこそ、思いは強くなる
感覚を掴み、ハンドリングに慣れてきたら、ついに待ち望んだ瞬間へ!早速、会場いっぱいにエンジン音をとどろかせたのは、体験走行会2回目の参加となる女性パラモトライダー。4年前に交通事故で下半身不随となり、できないことばかりが増えてしまったと言います。でも、気持ちでは負けたくない。できることを探そう!もう一度バイクに乗ってみたい!と、強い思いで体験走行会に応募されました。
「前回は思うように乗れなかったので、今日のためにずっとリハビリを頑張ってきました。最後の1本を青木さんに褒めてもらったので、次につなげていきたい。そしていつか、憧れの鈴鹿や箱根の峠を走ってみたいですね」と声を弾ませて語ってくれました。
懐かしさがよみがえる感動の瞬間へ
最初は恐る恐るバイクに乗っていたパラモトライダーたちも、次第に走る喜びを肌で感じ、その表情はますます明るく輝いていきます。そんな中、登場したのは、平塚競輪場所属の3人の現役選手たち。ボランティアスタッフとして、体験走行会を大いに盛り上げていました。
頼れる選手たちのサポートに、背中を押されるようにバイクを走らせたのは視覚障がいのある板嶌憲次郎さん。大人になってから視力を失い、現在は明るさがわかる程度なのだそう。しかし、障がいを感じさせない走りを見せ、会場は拍手が鳴り響くほどに。板嶌さんにとっては27年ぶりとなるバイクに乗った感想を聞かせてもらいました。
「ギアが入った振動、ヘルメットの感触、ガソリンタンクの冷たさ……懐かしさがじわっと込み上げてきました。やっぱりバイクが欲しいという欲が出てきちゃいましたね(笑)。今日の体験を通じて、何かひとつできるようになることが、支えになるのだと改めて感じました。」
チャレンジをきっかけに、夢を諦めない未来につなげたい
体験走行会中は、パラモトライダーたちに伴走しながらアドバイスを送り、走り終えた後は満面の笑みでハイタッチをしていたのは、SSP代表理事の青木治親さん。無事にイベントを終え、最後はほっとした表情に。
「体験走行会はこれまでに何度も行っていますが、毎回、ヘルメット越しに見えるパラモトライダーたちの喜ぶ顔が印象に残ります。私たちの活力にもなっています。やって良かった、と。
障がい者の人の中には、オートバイに乗るのは危ないから無理だと諦めている方も多いのではないでしょうか。でも、チャレンジすることで何かが変わるかもしれない。オートバイに乗れちゃったよ、という喜びが彼らのエールになって、今まで諦めてきたこともできるんじゃないかって自信にもつながっていくと思います。」
そして青木さんは、さらなる目標を語ります。
「オートバイは世界共通の乗り物だからこそ、今度は日本から世界へと発信できる活動に育てていきたい。競輪とオートレースの補助事業に支えてもらいながら、障がいを負った人が夢を諦めない環境をもっと広げていきたいですね。」
降りしきる冷たい雨とはうらはらに、太陽のような熱い思い。その思いがパラモトライダーたちの新たな夢への一歩となり、今日という一日で数え切れないほど笑顔をあふれさせていました。
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