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物質に光を当てた際の反響音を測定する
野田准教授:「私たちの研究は、光音響効果を利用した微小なセンサによる成分測定です。物質は光を当てると、人間の耳には聞こえないレベルの音を発します。その音を測ることで、どんな成分が含まれているのか判別することができる。つまり、料理に光音響センサを用いれば、塩や砂糖など目視できない成分が正確に分かるのです」
研究室の代表を務める野田堅太郎准教授
ただし、光音響効果を活用したセンサや装置はすでに昔から存在しています。しかし、野田研究室のセンサの特長は従来のものより小型化されている点にありました。
野田准教授:「現状の光音響センサを用いた測定装置はとても大きく、一部の場所でしか使えません。私としては小型化することで、より活用できるシーンを増やしたり、どこでも安心・安全な食を楽しめるようにしたい。一般家庭でもレシピ通りの正確な調理ができるようになったり、食品工場での導入が増えることで、材料の配合が上手くいかなかった際の廃棄や異物の混入を防ぐこともできるんです」
小型化に成功した野田研究室の光音響センサ(測定装置)
センサ部分は顕微鏡で拡大しないと見えないほどに小さい
機械に向き合っているようで、人間に向き合う研究
野田准教授曰く料理中の成分、つまり塩加減や旨みの強弱などを測定することは、人間の味覚を再現することに近いとのこと。そこには数値を測るだけでは解明できない、独特の難しさがあるそうです。
野田准教授:「成分の正確な測定は実現できていますが、人間の味覚を完全再現するとなると、まだ実現はできていません。人間は味を味覚だけでなく、触覚や嗅覚など複数の情報をまとめあげて認知しています。メロンソーダにメロンが入っていないのに、香料や色でメロンの味がするように感じるのが分かりやすい例ですね。そのため、AIなどを用いて味覚以外の感覚センサも統合して計測する必要があったりと、乗り越えるべき課題も多いんです」
一方で、複雑な研究だからこそのやりがいも大きいと野田准教授は語ります。
野田准教授:「機械に向き合っているようで、人間に向き合っている研究なので、日々人間の面白さを感じています。なぜ今自分の体はこう感じたのかなど、自分の感覚を研究に活かし、それによって新たな発見が得られるのは楽しいですね。ただ、楽しいだけで満足するだけでなく、それをどうやって世の中の役に立てるかを考えて、発展させることにもやりがいを感じています」
後進の育成にも取り組む野田准教授
また、野田准教授とともに研究に取り組む学生にも、研究への姿勢を聞くことができました。
岡崎さん:「もともとロボットに興味があったことがきっかけで知能ロボット工学科と、野田先生の研究室に所属しています」
杉本さん:「光音響効果の研究に興味があり、この研究室を希望しました。非常に繊細な技術なので、思うような結果を得られないこともありますが、試行錯誤を繰り返すことが難しくもあり、楽しくもあります」
岡崎さん:「私は研究室に入ってからセンサを学び始めたので、日々新しい知識を学ぶことに苦労しつつ、やりがいを感じています。学生のうちは没頭できるものをなんでもいいから見つけて、突き進んでほしいと野田先生は仰っているので、自分が興味のある分野に熱中できるのはありがたいです」
杉本さん:「同感です。それだけでなく、先生と同じく研究にとどまらず、研究を活かしたものづくりができるようになればいいなと」
お話を伺った杉本さん(写真左)、岡崎さん(写真右)
ロボットへの活用も、センサ単体での計測も
最後に野田准教授に、今後の目標や展望をお話しいただきました。
野田准教授:「本来私の研究の主体はロボットで、味覚はロボットの感覚に関する研究の一つです。そのため、最終的には人間以上の五感を持ち、暮らしをより快適にサポートできるロボットをつくることが目標の一つです。また、センサ単体でも非常に高精度の測定が実現できているため、たとえば人体にセンサを用いることで、血糖値を正確に計測して健康的な生活の役に立てるなど、味覚にとどまらない活用も想定しています」
小さくとも、非常に大きな可能性を秘めたセンサ
ロボットとセンサ、両方での社会貢献を目標としている野田准教授。しかし、志を高く持つほど研究に関する費用など、現実的な問題も立ちはだかってくるそうです。そんなときに活用したのが、競輪とオートレースの補助事業でした。
野田准教授:「今回は塩分を計測する研究に補助いただいたのですが、これまでにもさまざまな研究で競輪とオートレースの補助事業を活用させていただき、補助の対象範囲は幅広いと思っています。私は人間ができないことを叶えてくれたり、暮らしを便利にしてくれるロボットをつくることが夢なのですが、そのためにはもっとさまざまな研究を重ね、ロボットが人のためにできることを増やしていく必要があります。そういった夢への挑戦を、補助事業に支えてもらっているのです。もちろん社会貢献性など基準はあると思いますが、自分の研究には関係ないと思わず、一度応募してみるのも良いのではないでしょうか。それによって、世の中にとって良い研究や技術が広まることもあると思います」
研究者としての好奇心を大切にしながらも、研究をどうやって人々の暮らしのために役立てるかまで考える。野田研究室はロボットやセンサというメカニカルな研究を進めながらも、あたたかな思いにあふれていました。