2026年5月30日(土)、千葉県柏市にある施設でsfiDARE CRIT(スフィダーレクリット)のシリーズ戦sfiDARE CRITvol25「INDYKART CRITERIUM2026」が開催されました。自転車競技がさまざまにある中で、レースに使用される自転車はどんな特徴があり、選手たちはどんな走りを見せてくれるのか。緊張と熱気にあふれた会場を取材し、レース監修を務めた一般社団法人スフィダーレクリットの児玉利文さんと児玉和代さんに話を聞きました。

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無駄のない、まさにシンプル・イズ・ベストな一台

今回のレースで使用されるのは、ピストバイクと呼ばれる自転車です。ピストバイクとは競技用の自転車のことで、ブレーキも変速ギアもない、非常にシンプルな構造になっています。

スマートな見た目とファッション性が高いことでも人気

児玉利文さん:「ピストバイクは自転車の原型のようなもので、最小限の機能しか付いていません。スピードもトリックもペダルを漕ぐ足でコントロールするので、自分の力すべてが自転車にそのまま伝わり、ダイレクト感のある乗り心地が楽しめます。たとえて言うなら、BMX(バイシクルモトクロス)やスケートボードのようなもの。テクニックひとつで最大限の自由な走りが叶います。最近では、エクストリームスポーツとして人気が出ていますよ」

自転車競技の日本代表選手として活躍した経歴を持つ児玉利文さん

しかし、ピストバイクが公道を走るためにはブレーキの装着が必須となります。自由に走りたいのに走れない──。そんな人たちが乗りたい気持ちを発散させ、エネルギッシュに走れるステージを用意したいと考え、日本で唯一のピストバイクによるクリテリウムレース※の開催へと至りました。
※クリテリウムレースは、市街地などに設定された短い距離の周回コースを走るレースのこと。

テクニックと駆け引きが繰り広げられたレース展開

ついにスタートを切った「INDYKART CRITERIUM2026」。ピストクリテリウムはスピードもさることながら、テクニックがより求められる競技で、加速、減速、コーナリングすべてのコントロールが勝敗を左右します。とくに、コーナーで選手たちがどう仕掛けるかが大きな見どころ。レースでは、徐々にスピードを上げながら一瞬の隙を狙って追い抜くシーンに、観客から大きな歓声が沸き上がりました。

コーナーは後続からのプレッシャーが最もかかる瞬間

レースが終われば、ピストバイク仲間としての気さくな笑顔に

正しく安全に、自転車競技を好きになってほしい

「INDYKART CRITERIUM2026」では、レースの合間に初心者講習も開催されました。
基本的な乗り方のレッスンやテクニック、コース上で気をつけるポイントだけでなく、ライダーの皆さんに守ってほしいことも、しっかりと伝えていきます。

児玉和代さん:「ピストバイクが日本で流行り出した頃、街中をノーブレーキで走る人が増えてしまい……。そこからピストバイクは危ないというネガティブなイメージが付いてしまったのです。
そのイメージを払拭するためにも、私たちがすべきことは正しい楽しみ方を発信していくこと。ルールを守って走る方がかっこいいし、クールだよねって伝えたい。みんなが正しく走ることで、街の安全や安心にもつながっていきますから。そのためにも、もっと多くの人の目につく場所でレースを開催したかったのです」

女子レーサーとして世界を舞台に活躍していた児玉和代さん

安全面の普及はもちろん、一人でも多くの人に自転車競技に興味を持ってもらいたい。そんな想いの一方で、自力でやれることには資金面の課題があり、小さな規模での開催しかできませんでした。そんな中、競輪とオートレースの補助事業のことを知って申請することに。補助を受けてからは遠征に行けるようになり、お台場や横浜の赤レンガ倉庫など、多くの人に見てもらえる規模の大きい場所でレースが開催できるようになりました。

ピストバイクが人生を大きく変えてくれた

横浜の赤レンガ倉庫で開催されたレースに参加したことがきっかけとなり、自転車競技の世界が広がったという瀬下舜斗(せしもはやと)選手にお話を聞きました。

瀬下選手:「僕は小さい頃から自転車少年で、もっと面白い自転車に乗りたいとずっと思っていました。その時に出会ったのがピストバイクで、ただ走るだけじゃなく、トリッキーな動きもできるという唯一無二感に惹かれました。
ピストバイクはノーブレーキが真の姿なのでレースの機会があるのは本当にうれしく、横浜のレースに参加したことで世界はもっと広がりました。自転車で荷物を運ぶメッセンジャーという仕事を見つけたり、海外のレースに挑戦する最初の一歩になったりと自分の可能性に気づかせてもらい、今は競輪選手を目指して頑張っています」

「ピストバイクに乗るようになって人との関わりも増えた」と語る瀬下選手

自転車競技をもっと多くの人に届けたい

レース中、大会の安全を第一にサポートしながら、選手やスタッフたちに声をかけつづけていた児玉夫妻。最後に、今後の展望について聞かせてもらいました。

児玉利文さん:「自転車競技という文化をもっと広げていきたいですね。ピストバイクをきっかけに、エクストリームスポーツとして極めたり、競輪やロードレースに挑戦してみたりという道もあると思います。レース開催を通じて、その先の道を創り出していけるよう、今回のような街中のレースだけでなく、競輪場のコースを走る本格的なトラックレースを行うイベントも企画していきたいと考えています」

児玉和代さん:「ピストバイクはワイルドな印象を持たれているため、圧倒的に男性が多い現状です。なのでこれからは、女性や小さなお子さんに向けてもっとアピールしていきたい。まったく違う自転車を走らせる面白さを感じてもらいたいですね。もちろん、最初は見学や講習会への参加だけでも大歓迎なので、ぜひチャレンジしてみてください!」

熱い想いを語ってくれた児玉夫妻

自転車でありながら、私たちがイメージする自転車とは全く違う乗り物のピストバイク。児玉夫妻やたくさんの選手たちの好きという気持ちが原動力になり、いくつものレース展開が見る人たちを新たな世界に引き込んでいました。