私たちの生活に欠かせないプラスチック製品。ボールペン、歯ブラシ、スマートフォンケースなど、周囲を見渡せばたくさんのアイテムが目に入ります。カラフルなイメージがありますが、素材そのものは基本的に無色。製造工程で複数の塗料を混ぜ合わせ、さまざまな色に仕上げています。

そんなプラスチックの染色工程を大きく変えるかもしれないのが、岐阜大学の船曳一正教授が取り組む「カメレオン色素」の研究です。研究室に導入された最新設備に競輪とオートレースの補助事業が活用されていると聞いて、オートレーサーの森下輝選手が「オートレースの売上が社会にどう貢献しているかを知りたい」と研究室を訪れました。

【CYCLE MOVIE#5】プラスチック染色の常識を変える!?カメレオン色素の研究。―オートレーサーが岐阜大学の研究室を訪問―

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ひとつの原料から複数の色をつくる「カメレオン色素」

森下選手:「今日は、特殊な色素の研究をしているという岐阜大学の研究室に来ました。競輪とオートレースの補助事業の存在は知っていましたが、それがどんな風に活用されているかをこの目で見たことはなく、ワクワクします!」

岐阜大学を訪問する森下選手

船曳教授:「森下選手、よく来てくれました。私たちの研究室では、プラスチックを染める色素の研究を進めています。通常、プラスチックを染めるには色の三原色と言われるシアン(水色)、マゼンタ(赤紫)、イエロー(黄)の塗料が必要です。プリンタの印刷用インクなどで名前を聞いた記憶があるかもしれませんね。この3色を混ぜ合わせ、赤や緑、ピンクなどそれぞれの色をつくっていきます」

研究の説明に入る前に、色の基礎知識から教えてくれる船曳教授。森下選手も小学校の頃に図工の授業で絵の具を混ぜて色をつくった経験を思い出しながら、船曳教授のお話に耳を傾けます。

船曳教授:「しかし、私たちが研究で見つけた物質を使えば、たった1種類の原料でプラスチックをあらゆる色に染められるようになります。私はこれを“カメレオン色素”と名付けました」

実際に染色したプラスチックを見せながら説明する船曳教授

船曳教授が見せてくれたのは、緑色の粉状物質。この粉末に特定の有機溶剤を混ぜれば、それだけでさまざまな系統の色がつくれるそうです。その性質が、まるで周囲の環境に合わせて色を変えるカメレオンのようだと、この名前になったと教えてくれました。

船曳教授:「工場でプラスチック製品を大量につくるとき、基本的には3色の塗料を使用します。その際に消費する化学溶剤や、そこから生まれる廃棄物、排気熱などは環境問題に関わるもの。でも、1種類の原料ですべての色がつくれれば、化学溶剤や廃棄物の量が減らせますよね。カメレオン色素は環境にやさしいサステナブルな原料なのです」

現在、カメレオン色素からつくれる色の種類には限りがありますが、将来的には思い描いた通りの色に染められるよう船曳教授は研究を進めています。

サステナブルな進化で未来をカラフルに

お話の途中、船曳教授から「森下選手は何色のオートバイに乗っていますか?」と聞かれ、森下選手は「青色です」と返事をします。

船曳教授:「青色!素敵ですね。車体を着色する際も塗料が使われていますが、もしかするとこの先、“塗料は環境に悪いから使用を禁止する”などの未来が待っているかもしれません。世の中のいろんなものから色が消えてしまったら、あまりにも無機質でつまらない。カメレオン色素が広まれば、色のない未来を回避できるとも考えています」

船曳教授のお話を興味深く聞く森下選手

森下選手:「この研究には競輪とオートレースの補助事業が活用されていると聞きましたが、具体的にはどんな風に使われているのですか?」

船曳教授:「競輪とオートレースの補助事業を通じて、色素を数値化できる測定装置を導入しました。これによって、見た目の印象で何色かを判断するのではなく、数値的な根拠を持って何色かを示せるようになりました。数値化は研究において非常に重要な要素。有意義な環境が整ったと感じます」

競輪とオートレースの補助事業を通じて導入された測定装置

学生の熱意が、研究の可能性を広げる

船曳教授からお話を聞いた後は研究室へ。研究室に所属する学生さんに協力してもらい、カメレオン色素と有機溶剤を混ぜて2種類の色をつくってもらいました。

学生さん:「色素を合成する際は、こちらの試験管に原料となる粉と必要な材料を入れて加熱します。今回はこちらの装置で反応を進めます」

カメレオン色素を使ってプラスチックを染める様子

そう言って、プラスチックを赤色と青色に染める様子を見せてくれました。

森下選手:「こんな風につくられているんですね」

さらに、染めたプラスチックを測定装置に入れ、色素を数値化する流れも紹介してもらいます。測定にかかる時間は数分程度。測定装置のおかげで研究に取り組みやすくなったと、学生のみなさんは言います。

学生さん:「以前は研究室内に同等の設備がなく、料金を支払って他の棟にある設備を使用していました。最新機器を導入できたことで研究がスムーズになりました」

研究室に入ったきっかけや日々の研究内容についてもお話を聞いていると、誰もがこの研究に本気で取り組み、「もっと良くしたい」という研究への熱量がしっかりと伝わってきます。

助教の水野さんと研究室に所属する学生のみなさん

お話を聞いた森下選手も、「みなさんの研究によって未知の物質や方法が見つかったらすごいですよね。将来、カメレオン色素が社会で使われるようになったら、絶対に今日の出来事を思い出します」と想いを伝えます。

船曳教授:「試行錯誤の日々ですが、これからも学生と共に研究を進め、森下選手のような専門知識を持たない人にも“おもしろい!”と思ってもらえるところまで進化させたいですね」

「トップレーサーになる」という社会貢献のかたち

研究のお話を聞いた後は、森下選手の経歴や今後の目標についても盛り上がりました。

船曳教授:「森下選手はどうしてオートレーサーになろうと思ったのですか?」

森下選手:「僕のお兄ちゃん的存在でもある友人が、オートレーサーになったのがきっかけです。その人とは小さい頃からずっと一緒にモトクロスをしていましたが、彼がオートレーサーの試験を受けたと聞いて僕も本格的に志すようになりました」

船曳教授:「素敵ですね!これからどんな選手を目指したいですか?」

森下選手:「僕は現在デビュー3年目。まだまだ若手ですが成長してトップレーサーになり、もっと自分の存在を知ってもらい、そしてオートレースを世の中に広めたいです。それが結果的に売上になり、こうした研究の貢献にもつながると思うので頑張っていきます!」

船曳教授:「競輪とオートレースの補助事業は、私たちの研究を促進してくれた大切な存在。本日ご紹介したカメレオン色素を、もっと社会に役立てられるよう私も研究に励みます」

時速約150kmで勝負に挑むオートレーサーと、有機化学の新たな可能性に挑む大学教授。それぞれ活躍するフィールドは違いますが、夢に向かって前へ進む姿勢は同じ。今回の訪問が、そのことを教えてくれました。競輪とオートレースの補助事業は、未来社会の貢献を目指して未知の領域に挑む人や事業を応援し続けます。